エルサレム人という不思議なヒト科の生き物の知られざる世界をmiche13がレポートします。イラストはたかこ。


by miche13
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葬儀

大学内には、大学関係者およびその親族が亡くなると葬儀告示が貼り出されます。

テロの後には特にその数が増えたりします。

今日、授業に行く前に、ふと告示に目をやると

「えっつ、この名前は。いや、違うよな。人違いだよな。でも珍しい名字だし、プロフィールも合ってるし。」

張り紙の前で「うそ。うそ。うそ。」と100万回叫びましたが、間違いありません。本人でした。

ヘブライ大の講師で、私の修論指導教官の奥さんです。

よく教官の自宅で勉強していたので、彼女とも何度も会っているのです。

エルサレムシアターの前を手をつないで仲良く歩く2人を目にしたのが最後です。

まだ30代だったと思う。

このあと気を取り直して授業に出たけど、集中するのが大変だった。

気づくとぼーっと彼女たちのことを考えていて、かなり動揺してます。

葬儀は昨日で終わっていた。

でもユダヤ教には、葬儀後7日間座り続けて喪に服すシブアーという儀式があるのでそれに行ってこようと思います。

何を着ていったらいいのか、何を持参するべきなのか友人に聞きました。

まずは葬儀から。

遺体を塩水で洗います。目の中も洗うのですが、さすがに真水を使うそうです。

そのあと袋ですっぽり体を覆い、その上からタリートか頭からすっぽりかぶる布(名称忘れた)をかぶせる。

もう、この時点で顔は見れないのですよ。

葬儀のときに最後の顔を見ることはできないのです。

葬儀と言っても、墓地で祈りを捧げて、遺体をごろんと穴に放り、砂をかけるだけですからね。わりとあっさりしたものです。

で、シブアーのほうはどうなのか質問してみました。

「祭壇とかあるの?」
「ないよ。」

「じゃ、遺影とか飾ってあるの?」
「ないよ。」

「何があるの?」
「親族の人たちが椅子に座ってて、訪問者は床に座って話してるだけ。」

「話ってどんな?」
「普通に、世間話とかしてるよ。」

「泣いてる人とかいないの?」
「葬儀の時にはいるけど、シブアーではいないよ。」

服装も派手でなければ何でもいいみたいだし、

この期間中は料理ができないので、親しい訪問者が食事を作って持ち寄るのが習慣になっている。

イエメン系はかなり豪勢な食べ物を持ち寄るらしいのだが、アシュケナジー系はクラッカーとか軽食乾き物系が多いそう。

私は何も持参する必要がないらしいので、ダークカラーの洋服に手ぶらで行ってきます。

でも、人の命ってはかないですね。

だれかが「今日が最後に会う日だと思って人に接しろ。」と言ってたな。

そうすると、やさしくなれるし、積極的な気持ちで接することができるから。

私も、彼女たちがシアターの前を歩いているのを見かけたとき、

また今度会ったときでいいやと思って、声をかけなかった。すごく悔やまれるよ。
by miche13 | 2006-04-25 05:01 | 生活